イタリアの音楽ユニット、Takagi & Ketraがプロデュースしてヒットしている「Ciclone(サイクロン)」が同国でプラチナ認定されました。
この曲はGipsy KingsのNicolas ReyesとTonino Baliardoがギター(とちょっと歌)で参加していることで知られており、ジプシールンバのリズムとフラメンコギターのサウンドが特徴的なナンバーです。
ルンバの軽快なリズムに耳なじみの良いメロディと中毒性のあるリフレインが相まって、YouTubeではすでに3千万回以上の再生回数を稼ぐヒットソングとなっています。
カバーやダンス動画なども次々投稿され、今の時代ならではの勢いで拡散してきています。
これが公式のPV
Takagi & Ketra, Elodie, Mariah - Ciclone ft. Gipsy Kings, Nicolás Reyes, Tonino Baliardo
歌はElodieというイタリアの歌手とMariahというアメリカ出身の歌手の2人が起用されており、PVはイタリアの田舎を訪れたフラメンコダンサーたちをイメージした、ほのぼのした内容です。(ただPVの中でGipsy Kingsが演奏する様子が映ってないのが残念ではあります。)
ところでこれってどこかで見たことあるなーと思ったら、1996年のイタリア映画「踊れ!トスカーナ」と雰囲気が同じなんですよね。
映画の原題が「Il Ciclone」ということからも、Cicloneがこの映画のオマージュであることは明白ですね〜。
ちなみに「踊れ!トスカーナ」の主題歌は「Rythm is Magic」という英語の曲(元はスペイン語)ですが、のちにGipsy Kingsがスペイン語で「Magia del Ritmo」としてカバーしたバージョンがそこそこヒットしました。
人気ユニットとコラボしてYouTubeで流行らせヒットさせる時代
さて、この「Ciclone」はGipsy Kingsのギターサウンドなくしては成り立たない曲ですが、イタリアで人気のあるユニットがプロデュースし、同じく人気のある女性歌手が歌ったナンバーだから売れたという側面があります。
裏を返せば、おそらくGipsy Kingsとして単独でリリースしてもここまでのヒットにはならなかったんじゃないでしょうか。
世界の音楽シーンを見ていてもこういった流れはよく見られます。
特に中南米・カリブを中心としたラテンミュージックシーンでは有名な歌い手どうしがコラボしたり、低迷していた歌手が人気歌手とコラボして売れるようになった、みたいなことがよく見られます。
日本人ミュージシャン、ナオト・インティライミが中米のレゲトン歌手Joey Montanaとコラボした曲が一時ヒットしましたが、永続的なコラボではないのでこの曲限りのユニットで終了。
PVの内容はステレオタイプのジャパンなのであまり好きじゃないのですが、これは日本の三味線サウンドとレゲトンがうまく作用した例じゃないでしょうか。
その観点で言うと、今もっとも勢いのあるラテンミュージックの一ジャンルとして確立されている「レゲトン」はジプシールンバとリズムの取り方が似てるので、音楽的にとても親和性があると思うんですよね。
爆発的なヒットとなったレゲトンナンバー「Despacito」は南仏のジプシーミュージシャンたちも盛んにカバーして演奏しています。
Daddy YankeeとかMalumaとかシャキーラとかフアネスとか、有名どころがGipsy Kingsとコラボしたら面白い曲ができるんじゃないかなーと勝手に妄想しています。
Chico & the Gypsiesはそういった時代の流れに乗ろうと、様々なカバー曲をリリースしたりいろいろなミュージシャンとコラボしたりしていますが、世界的なヒットにはなかなか恵まれません。
Chico親方は、当たれば大ヒット間違いなしのレゲトン歌手からのコラボオファーが来たらいいなーと密かに考えているんじゃないでしょうか。
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Cicloneがプラチナ獲得したとのニュースを受け、SNSでお祝いコメントが多い中、「コアなジプシーキングスファンにとっては悲しい日です」とコメントしている人がいました。確かに長年のGKファンとしてはちょっと複雑な心境になるかもしれませんね。
往年のGipsy KingsがBamboleoやVolareで世界的なヒットを打ち出した時代は遠に過ぎ去り、誰かとコラボしたりYouTubeでウケたりしないと世界的ヒットは狙えないのが今の現状。
でも、聴いたら誰もがノリノリで楽しめちゃうジプシールンバのリズムとサウンドは、ちょっとしたキッカケでワールドワイドに展開していくポテンシャルは十分にあると思うんですよね〜。Kendji Giracがいい線いってると思いますが、ReyesやBaliardo一族の間からそういう新しいミュージシャンが生まれてくれば面白いなーと思います。
(Luis)