ジプシールンバはフラメンコギターを弾き、パルマ(手拍子)、カンテ(歌)、ハレオ(掛け声)などの要素が交じり合って奏でられる音楽です。
それは、音楽的特徴を見てもフラメンコから産み出されたものであることは、一目(一聴)瞭然ですね。
では、フラメンコとジプシールンバは同じものと考えて良いのでしょうか?
これは結論から先に言うと、「両者は似て非なるもの。全く違うもの」と考えた方良いでしょう。
決定的に違う所は、コンパス(拍の定型)が有るか無いか、ということです。
フラメンコは4小節12拍をリズムの1単位とし、その12拍の中のどこにアクセントを置くかによってリズムの型、つまりコンパスが決まっています。そのコンパス(リズムの型)を土台にして、踊り、歌、ギターなどで曲を構築するわけです。
つまりコンパスによって曲が決まる、と考えてよいと思います。フラメンコの世界で俗に言う「形式」といわれる曲の型の根源は、全てコンパスにあるといっても過言ではありません。
しかしジプシールンバにはこのコンパスが無いのです。
そもそもジプシールンバギターの祖、Manitas de Plataがコンパスを全く無視して演奏をしていたのだから当然なんですけどね。

厳密に言えばアクセントを置くところは色々とあるけど、基本的に2拍子の力強い「ドン、ドン」というリズムを骨子にしているのがジプシールンバの特徴なのです。
とは言え、Manitas de Plataは2拍子だけを弾いていたのではないし、折々フラメンコの形式でも演奏しています。しかし自らの閃き、アイディアを表現するには、拍やコンパスを無視せざるを得なかったということなんでしょうね。
Manitas de Plata - Soleares Gitanas
フラメンコの一形式Soleaを奏でるManitas de Plata。非常に独創的なコンパスの取り方です。本場スペインのフラメンコ界からは異端視されるのも無理ないです。