Joseph Gautier “Zuzep” のソロアルバム「Gipsy Belcanto」

Chico & the Gypsiesのメンバーとしてメインボーカルとギターを担当していたJoseph Gautier(ジョセフ・ゴーティエ)通称 ”Zuzep” がソロ活動を開始。昨年秋にファーストアルバムとなる「Gipsy Belcanto」をリリースし、パリでの公演も予定されています。
今回はアルバムを聴いてみた感想、そしてJoseph Gautierの歌い手としてのキャリアについて触れてみようと思います。

「Gipsy Belcanto」を聴いてみた

2020年9月18日フランスのレーベル「Hello Lou Music」からリリースされ、今ではAmazonなどでダウンロード購入も可能です。

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Joseph Goutier Zuzep Gipsy Belcanto
サイン入りのアルバムをフランスから送ってもらいました。

「Belcanto」とはイタリア語で「美しい歌唱」を意味し、主にオペラでの理想的な歌声、歌唱テクニックを評価する時に使う言葉です。
アルバムタイトルの「Gipsy Belcanto」はその名の通りジプシーのベルカント。
ジプシールンバならではのギターの響きとリズムに乗せてジョセフの持ち味である張りと伸びのある歌声が、まさにジプシーのベルカントとも呼ぶべき音色に仕上がっています。

Joseph Goutier Zuzep Gipsy Belcanto

曲目リスト

  1. Lágrima de Poeta
  2. O sole mio
  3. Te extrano
  4. Ave Maria
  5. Te doy una rosa
  6. Je Pense à toi souvent
  7. Caruso
  8. Smile
  9. Hallelujah
  10. Hoy tengo ganas de tí

カンツォーネの定番「オー・ソレ・ミオ」やルチオ・ダッラ作曲の「カルーソー」(パヴァロッティやフリオ・イグレシアスがカバー)など、イタリアを代表するような曲もあれば、チャップリン作曲の「Smile」(後に歌詞がつけられナット・キング・コールら多くの歌手がカバー)、レナード・コーエンの「Hallelujah(ハレルヤ)」など、日本人にも耳馴染みのある楽曲も盛り込まれています。
小細工なしの堂々とした歌唱は見事ですが、バラード曲では囁くような優しい歌声も聴くことができ、今までジョセフという歌手のことを知らなかった人でも楽しめる一枚かと思います。

4曲目の「Ave Maria」はジョセフが作詞作曲したオリジナル作品。8分の6拍子のリズムで、ジプシールンバとは少し趣が異なります。
ジョセフの息子Ilarioがあどけなさの残る歌声でイントロを歌い、それに続いて父親のジョセフが雄大に歌い上げる流れがグッときます。

リードギターはギタリストのDavid "Mario" Reyes(マリオ・レイエス)が担当。ジョセフとは義兄弟の間柄で昔から数多くのステージで共演しています。
最近ではGipsy KingsのAndre Reyesのツアーメンバーとして世界を周っていたのが記憶に新しいです。

ちなみに、ジョセフやマリオが若い頃から所属していたのはGitano Family。彼らの他にLittle Patchai(リトルパチャイ)、Kassaka(カサカ)など、のちにチコジプなどにも参加し大きな舞台でも活躍することになるジプシーミュージシャンたちが多く在籍しています。

Joseph Goutier, Mario Reyes, Little Patchai, Kakou
ジョセフのFacebookページより引用。ロックダウン中に撮られた1枚。黒いシャツがマリオ・レイエス。その右はリトルパチャイとその弟Kakou Reyes。みんな従兄弟どうしで凄腕ジプシーミュージシャン。仲良さそうで楽しそう!

話を戻しますが、マリオ・レイエス自身も作曲家、アレンジャーとして多くの作品を残しており、「Gipsy Belcanto」でもオリジナル作品をいくつか聴くことができます。
イントロ曲として流れるマリオ・レイエス作曲のギターインストゥルメンタル「Lágrima de Poeta」(詩人の涙)はドラマチックで哀愁のあるナンバー。そのままシネマミュージックにも使われそうな美しい旋律に心奪われます。

歌い手Joseph Gautierのキャリアについて

毎年Blue Note Tokyoでの出演でもおなじみとなったChico & the Gypsies(チコジプ)ですが、ジョセフはリードボーカルの一人として年々存在感を増していきました。
なんと言ってもテノール歌手のような太く伸びのある歌声が特徴的で、もう一人のボーカルであるJean-Claude Vila(通称:ムーニン)がかすれたジプシーボイスであるのと非常に対照的です。

ジョセフがチコジプでリードボーカルを担当するようになったのは、2005年にリリースされたアルバム「Freedom」に収められた「Tu eres mi Mujer」 (セリーヌ・ディオンでヒットした「Power of Love」スペイン語カバー曲)でした。
当時はボイス・オブ・ジプシーとも呼ばれるManolo Gimenezがリードボーカルを務めていて、ジョセフはたまに歌う程度のサブボーカル的な存在でした。
しかしマノロが脱退し、メンバー構成も変化を重ね、2009年ごろから始まる一連のカバーアルバムではムーニンとともにリードボーカルを張るようになりました。
バンドマスター、プロデューサーであるChico Bouchikhi(チコ・ブーチキー)はジョセフの歌唱にバンドとしてのカラーを見出し、その後も積極的にジョセフをリードボーカルとして押し出しています。2013年ごろに、やはりジプシーボイスではなくジョセフと似たような歌い方をするカサカを加入させたりして、さらにそのカラーを強めた感があります。


数年前にライブでよくやっていた「Bella Chao」。ヨーロッパでは大人気の曲。

そんなジョセフも若い頃はアルルで建設作業などをして働く歌が好きな青年でした。前述のGitano Familyに参加したり、地元のミュージシャンとして地道に活動を続けていたました。
そんな中、彼の歌声を知っていた当時のチコが「パリでプライベートパーティーがあるので歌ってみるか?」と問いかけたのが運命を変えることになるきっかけだったかもしれません。パリでのショーは成功し、ジョセフの歌唱力が世に知られることとなり、その後のチコジプでの活躍は上述の通りです。

ソロアーティストとして今後も期待

ジョセフのソロプロジェクトはアルバム発表と同時に2020年9月にライブ開催するはずでしたが、コロナ禍のためキャンセルとなってしまいました。
その後も何度か延期が繰り返されましたが、フランス国内でコロナ感染の勢いが止まらず、結局2020年は大きな公演が軒並みキャンセルまたは延期に。
2021年に入り、1月17日そして2月末にパリのコンサートホール「L'Olympia」で開催が予定されています。いまだコロナ収束に目処が立たない中、無事に開催されることを願ってます。

ソロアルバムがリリースされ、さらに大きな公演が開催されれば今後もジョセフ・ゴーティエ"Zuzep"として新たなキャリアを積み重ねていく有意義なステップになることでしょう。
コロナが収束したら来日公演なども行える日が来るかもしれませんね。
今後も楽しみなジプシーミュージシャンの一人なので応援していきたいです。

(Luis GG)

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