Chicoプロデュースの新ユニットNew Gypsiesはマニタスの子孫?Baliardo一族から批判殺到

元Gipsy Kingsで現在はChico & the Gypsies(以下C.G.)のマスターであり、南仏ジプシーミュージックシーンにも大きく貢献しているChico Bouchikhiが5月にスタートさせた新ユニット、その名も「New Gypsies」。

Chicoの息子たちがメンバーを務めるキッズ・カルテットですが、その売り出し方に一部の人たちから批判の声が上がっています。その原因についてお伝えします。

新生キッズユニット New Gypsies とは?

もう1ヶ月くらい前になりますけど、YouTubeやSNSなどで話題になっていたPVをまずはご覧ください。

New Gypsies - Sans amour on n'est rien (Clip officiel)

公開されて2ヶ月、すでに再生回数130万超!

公開当初は「お、なんだかキッズがハイトーンで歌ってる新しいジプシーのユニットが現れたな…」と思っただけでスルーしていました。
ところがこの子たちはChico Bouchikhi自身がプロデュースしているユニットで、メンバーにChicoの血縁者、Reyes家やBaliardoの血縁者が含まれている(らしい)、ということを後で知りました。

サウンド的にはKendji Giracみたいないわば現代風のポップチューンの色が濃いため、古くからのジプキンファンは「今どきの音楽」で済ませてしまいそうです。
しかしChicoはKendjiの商業的成功に倣ってKendjiのヒット曲のいくつかを生み出したプロデューサーKarim Deneyerらと組んで、新世代の「売れる」ユニットを作ろうと、始まったプロジェクトのようです。

64歳になったChicoさん、息子や孫の世代に引き継ぎを行う姿はたくましくも微笑ましいものを感じます。しかし問題となっているのはNew Gypsiesの売り込み方、セールスキャッチコピーにあるようです。

その前にまずNew Gypsiesのメンバーが何者なのかを見てみましょう。

メンバーの出自。Reyes家とBaliardo家との関係

メンバーは4人。いずれもティーンエイジャーです。(2019年7月現在)

New Gypsies
左から
Noah(17歳)…Reyesファミリー
Mario Cerviole-Bouchikhi(15歳)…Chico Bouchikhiの息子
Tambo(18歳)…Chico Bouchikhiの息子Réda Bouchikhiの息子、つまりChicoの孫
David Baliardo(17歳)…Manitas de Plataのファミリー(?)

一番ちっこい彼が15歳のMario。リードボーカルをはってます。まだ幼さの残る風貌と声質なのでもっと若いのかと思ったらすでに15歳。そろそろ声変わりする年齢ですがハイトーンボイスを売りにしていて大丈夫なんでしょうか。

孫(Tambo)が息子(Mario)より年上ってびっくりですがジプシーではよくあることです。
ChicoはJose Reyesの娘Marthe Reyesと結婚してReyes家の一員となり、子供が生まれ孫が生まれ、彼らはReyesの血を引いていると証明できます。(Marioは腹違いという情報もありますが確認中。そうだとしたらReyesともBaliardoともまったく関係ない出自となります)

ではBaliardoを名乗るDavidはどうなのでしょう?

Baliardo家はご存知の通りGipsy KingsのメンバーTonino、Diego、Pacoの家柄でもあり、2014年に亡くなったジプシールンバの祖とも言われるManitas de Plata(本名Ricardo Baliardo)の家系でもあります。

Davidが果たしてManitasの血を引いているのか否か、それは後に述べることにします。

Chicoのゴリ押し?5月くらいからメディアの露出が増え、たちまち話題に

PVが公開されるとFacebookなどSNSでの露出も増え、フランス国内のテレビ番組や音楽関連のニュース記事にも取り上げられ、ここ2ヶ月ほどで一気に知名度が上がったのが印象的です。
Chicoの幅広い人脈が有利に働いたという見方もできます。

5月末にはC.G.のメンバーやその取り巻き、Pablo、Canut(元Gipsy Kingsメンバー、現在はC.G.に加入)も含めてBamboleoのカバーをPV化してSNSでちょこっと話題になりました。

New Gypsies - Bamboleo (Cover)

撮影場所はChicoの運営するジプシー風テーマパーク「El Patio de Camargue」にて。

オクターブ上で歌うMarioのBamboleo。そして何人いるんだ?っていうくらいのギターサウンドの厚みが心地よいPVですね。

で、本題に入りますが、Chicoのプロデュースするニューバンド!っていうだけならまだ良かったのですが、彼らの売り出し文句としてManitas de Plataの名前が使われていることが問題になっているようなのです。

物議を醸しているのはフランスのニュースサイトMétropolitainで報じられたこの記事。

Ils ont comme point commun la star Manitas de Plata, puisque leurs patents, grands-parents et oncles se sont produits sur les plus grandes scènes du monde...

source : Musique. Premier single : les News Gypsies sont des « enfants » de Manitas de Plata | Métropolitain

New Gipsiesを紹介するのに「世界の大きなステージで演じてきた祖父や叔父にあたるManitas de Plataという共通の星を彼らは持っています」と記載されています。(ちょっと意訳ですがだいたいそんな意味)

この記事に書かれていることに対して反発の声を上げたのはManitasのファミリー、Baliardo家の人たちでした。

Manitasの孫、KemaとPaco Baliardoが告発ビデオを公開

Manitas de Plataの実の孫でもあり、長年C.G.のリードギタリストとして活躍してきたKemaがこんなビデオをFacebookで公開しました。
隣に座っているのはPaco Baliardo、同じくManitasの孫にあたる人物です。

おおまかにまとめると…

「New GypsiesがManitas de Plataの子孫であるというMétropolitainの記事は100%虚偽です。彼らメンバーの中にManitasの子や孫はいない。」

「Manitasの唯一無二のブランドがこのように使われて、僕ら息子や孫たちは非難の声をあげている。僕らファミリーに対する尊敬の念が欠けています。」

「若者がすでに才能を生かして音楽活動しているのを喜ばしいこと。それはとても良いこと。しかし彼らがManitas de Plataの子孫だというのは嘘。Chicoは(Gipsy Kings在籍時から今に到るまでManitasの名前を宣伝文句に使うという)嘘の言動を続けて30年が経ちました。」

「私は正当なBaliardo家の血筋です。だから私の祖父についてこんな話を持ち上げられるのは悲しいこと。とても受け入れることができません。」

「僕でさえManitasの孫だということを宣伝に使ったりはしません。」

「Baliardoファミリーの人間は彼に強く言える立場にない。しかし僕は長年C.G.のギタリストとしてプレイしてきた。だからここで言いたいことを言っている。みなさんが僕を信じてくれることを願っています。」

機械翻訳なのでちょっと間違ってるところもあるかもですが、だいたいこんな感じのことを語っています。

かつてはChicoの片腕としてC.G.のリードギターを務めていたKemaですが、現在はソロ活動やKendji Giracのバックミュージシャンとして活動しています。
Chicoのビジネスのやり方を長年傍で見ていた彼はいろいろ思うこともあったのでしょう。脱退してしがらみもなくなった今、Baliardo家を代表してこのように告発ビデオを公開したのだと思います。

他のミュージシャンにはなかなかできないことで、勇気ある行動とも言えます。

なお、この映像に対しては多くのイイねや賛同コメントが寄せられています。

Manitasの息子Fernando Baliardoも非難声明を出す

Kemaのビデオの他に、Manitasの実の息子であるFernando Baliardo氏も非難のコメントを出しています。
Fernanndo氏もManitasの遺志を受け継ぎ自身もギタリストとして活動をする、いわばManitas de Plataの後継者の一人。
やはり問題のMétropolitainの記事を見て、父親であるManitasをNew Gypsiesの宣伝文句として勝手に使われたことに憤りを感じていると報じられています。

Chico raconte n'importe quoi et se sert une nouvelle fois de mon père pour faire la publicité gratuite des New Gypsies.
Contrairement à ce qu'il affirme, il n'y a ni fils, petit-fils, ni cousin, bref, personne qui est de ma famille, c'est archi-faux, il n'y a aucune trace héréditaire », a récemment assuré Fernando Baliardo à Métropolitain.

source : Les New Gypsies et Chico : le coup de colère du fils de Manitas de Plata | actu.fr

「Chicoの父親はモロッコで生まれ、母親はアルジェリアで生まれ。ジプシー出身ではないChicoは悪名高い。」

「彼はManitas de Plataのイメージと世界的な評判を利用している。New Gypsiesには、我々ファミリーの孫やいとこはいない。José Reyesファミリーのうち一人だけ親戚がいるが、私の父との関係はない。」

加えてここ30年あまりのChicoの音楽ビジネスや不誠実な態度においても苦言を呈しています。

「Chicoがジプシーの文化の中で活動できているのはJose Reyesの息子たちとの親交がきっかけ。1960年代にはChicoはHLM(低家賃住宅)、Reyesファミリーはキャラバンに住んでいました。その時に彼らは出会ったのです。(やがて彼らは音楽的成功を続け、スポークスマンとしてChicoが表に立つようになると)CD販売やテレビ出演、コンサートなどでManitasの名前を売り文句として使うようになりました。父はこの哀れなChicoの態度に耐えられませんでした。」

「しかも父が亡くなった時、モンペリエで行われた葬儀にも来なかったのです。」

Chicoの反論。Davidの身分証明証まで公開

こうしたBaliardo家からの批判の声に対してChicoはメンバーの一人、Davidについて言及。
なんと彼の身分証明証を公開して彼がBaliardo一族の一員であることを訴えています。

David Baliardoの身分証明証
David Baliardo membre des New Gypsies (©Chico Bouchikhi)

確かにBaliardoと記載があり、彼がBaliardoファミリーの一人であることが分かります。
しかしManitas de Plataとのつながりを考えると微妙です。実際にはDavidはManitasの兄弟の孫なので、血の繋がりはうっすらあるものの、かなり遠い親戚にあたります。

Chicoはこの画像とともに「DavidがManitasと遺伝的継承が存在している証拠」と表明していますが、ちょっと無理矢理感が否めませんよね。

Mon fils Mario et Tambo, deux des quatre membres du groupe sont des descendants de José Réyès, qui n'est autre que le cousin de Manitas. En plus d'être des héritiers génétiques, ce sont des héritiers spirituels.

「MarioとTamboは、ManitasのいとこJose Reyesの子孫。だから彼らは遺伝的継承者であるばかりか精神的継承者だ。」とよく分からないことも言っています。

さらにはこんなことも

Jamais, je ne dit que c’est grâce à Manitas de Plata que j’ai fait ma carrière, que je poursuis activement, en donnant une chance à des jeunes de la communauté gitane

「自分のこれまでのキャリアはManitas de Plataのおかげだということは決して言っていない。」

「ジプシーコミュニティの若者たちにチャンスを与えるために積極的に活動しているだけです。」

強気のChico親方
強気のChico親方。

何はともあれ、メディアに取り上げてもらえるよう話題性を出すためにManitasのネームブランドを利用している感はありますね。

この騒動でよくも悪くもNew Gypsiesの名が知られるようになり、結果的に炎上商法との捉え方もできます。したたかなChico親分はそこまで計算していたのかどうなのか。

演奏してる子供達は悪くない

批判を浴びているのはChicoの売り込み方であって、New Gypsiesのメンバーたちには何の落ち度もありません。純粋に親や親戚たちが演奏する姿を見て育ち、ジプシールンバを素直に愛している若者たちです。
いろいろと言われていますが、まだ20歳にも満たないのにこんなチャンスを掴み取った彼らはラッキーとも言えます。まだ垢抜けない雰囲気がありますが、場数を踏んで行けば化ける可能性も秘めています。

Kendjiをもしのぐ人気者になるか、はたまた一発屋で終わるか。批判を受けつつも巧みにプロモーションを展開するChicoの手腕が問われるところでしょう。

彼らは7月末から8月中旬までフランス南部の海岸沿いでサマーツアーを行う予定。
学校が休みの日にはパリのスタジオでアルバム制作に従事しているとのこと。全14曲予定のアルバムは8月にはリリースされるらしいです。

後記

ChicoはBaliardo家の人たちには素直に「勝手にManitasの名前使ってごめん。」と謝って、正々堂々と俺の息子と孫のバンドだ!とやればいいのになーと個人的には思うのですが。
ファンにしてみれば家柄がどうのとかの論争はどーでもいいわけで、純粋にいい音楽が聞きたいっていうのが正直なところ。
ま、裏ではこういうゴタゴタが起きてますよ、というゴシップネタをお送りしました。

フランス語訳などテキトーな部分もあるので、ご指摘頂ければ直します。

(Luis)

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